事例の背景
Y先生は、神奈川県で開業して10年目の歯科医師です。ユニットは4台、スタッフは歯科衛生士3名を含む12名体制。地域の評判も良く、年商は1.2億円前後で安定していました。数字だけ見れば「順調な医院」です。
しかし、先生の口から出てきたのはこんな言葉でした。
「売上は伸びているはずなのに、なぜかお金が残らないんです」
実際、月商は安定しているにもかかわらず、決算前になると運転資金が心もとなくなり、賞与や納税のタイミングでは資金移動に神経を使う状態でした。2年前にCTとマイクロスコープを導入し、その返済も続いています。自費率は上がっている実感があるものの、感覚頼りの経営で、「いま何にどれだけ使っているのか」が正確に把握できていませんでした。
顧問税理士はいたものの、主なやり取りは決算と申告業務のみ。月次の試算表は受け取っていましたが、「数字の読み方が分からない」「結局どう動けばいいのかが見えない」というのが本音だったそうです。
先生自身も、経費削減を試みて材料費を見直したり、広告費を一時的に抑えたりと工夫はされていました。しかし、その場しのぎの対応では根本的な改善には至らず、「このまま分院展開どころか、今の規模を維持できるのか」と不安を感じるようになったといいます。
そして、「ちゃんと数字で経営を見直したい」と考え、歯科専門で資金改善に強い専門家を探し始めたのが、今回のご相談のきっかけでした。
当事務所からのご提案
まず私たちが最初にお伝えしたのは、「売上を伸ばす前に、お金の流れを“見える化”しましょう」ということでした。
多くの歯科クリニックでは、損益計算書の“利益”だけを見て判断してしまいがちです。しかし、実際の資金繰りは「利益」とは必ずしも一致しません。借入返済、設備投資、税金、役員報酬、そして在庫や未収金の動き。これらが絡み合い、「黒字なのにお金が減る」という現象が起こります。
そこでまず行ったのが、月次のキャッシュフロー予測表の作成です。過去12か月の実績をもとに、固定費・変動費・借入返済・納税予定額を整理し、6か月先までの資金残高を見える化しました。
その結果、問題は大きく3つありました。
1つ目は、人件費率の上昇です。スタッフ増員と昇給が重なり、人件費率は適正水準を超えていました。すぐに削減するのではなく、「生産性と連動させる」設計に見直し、衛生士1人あたりの月間生産性指標を導入しました。
2つ目は、設備投資のタイミングです。CT導入後の返済が資金を圧迫している中で、追加の内装リニューアルを検討されていました。そこで、投資回収シミュレーションを作成し、「いまやるべき投資」と「待つべき投資」を明確に切り分けました。結果として、内装工事は1年延期し、その間に自己資金を積み上げる方針としました。
3つ目は、院長個人の資金設計です。役員報酬と生活費、個人保険の設計が曖昧で、医院と個人の資金が混在していました。そこで役員報酬を最適化し、納税予測を踏まえた年間資金計画を策定しました。
加えて、毎月の定例ミーティングでは「売上」ではなく「現預金残高の推移」を最重要KPIとしました。材料費率・人件費率・自費比率をダッシュボード化し、数字で経営を判断できる環境を整えました。
その結果、半年後には月末残高が安定し、賞与や納税時期でも慌てることがなくなりました。さらに、金融機関との面談にも同席し、資金繰り表を提示することで、追加融資の選択肢も確保できました。
キャッシュアップ顧問(スタンダード)は、単なる節税サービスではありません。
「今いくら残っているか」ではなく、「半年後・1年後にいくら残っているか」を設計することが本質です。
売上があるのに不安が消えない――その状態から抜け出すためには、感覚ではなく“設計された数字”が必要です。今回のケースでは、数字を味方につけたことで、経営判断のスピードと精度が大きく変わりました。
お客様の声
正直に言うと、最初は「売上もあるし、そこまで深刻ではない」と思っていました。ただ、毎年のように納税や賞与の時期にヒヤヒヤしている自分がいて、「これは健全じゃないな」と感じていました。
これまでは、試算表をもらっても正直よく分からず、「なんとなく大丈夫だろう」という感覚で経営していました。でも、キャッシュフロー予測を作ってもらい、半年先までの残高が見えるようになったとき、「自分は今までこんなに曖昧な状態で経営していたのか」と衝撃を受けました。
特に良かったのは、「やめること」と「今はやらないこと」を明確にしてもらえた点です。内装工事を延期する判断は迷いもありましたが、数字で説明してもらえたことで納得できました。もしあのまま進めていたら、今も資金繰りに追われていたと思います。
いまは月末残高を見ても不安がなく、スタッフ賞与も自信を持って出せています。銀行との面談も堂々とできるようになりました。
もっと早く相談していればよかった、というのが本音です。
「売上はあるのにお金が残らない」と感じている先生には、ぜひ一度体験してほしいサービスだと思います。