事例の背景
「良い治療だと分かっていても、高い金額を提示することに引け目を感じてしまうんです」 さいたま市内で開業するH院長は、非常に勉強熱心で技術も高い先生でしたが、経営面では「自費率の低さ」が長年のコンプレックスでした。
自費率は常に10%を下回り、売上のほとんどを保険診療が占めていました。近隣の歯科医院が自費率30%、40%と伸ばしている話を聞くたびに焦りを感じていましたが、無理な勧誘をして「金儲け主義だ」と思われたくないという心理的ブレーキが、説明の機会を奪っていました。 以前の会計事務所からは「もっと自費を売らないと利益が出ませんよ」と結果論だけを突きつけられ、具体的なアプローチ方法については何の助言もありませんでした。
「自分の技術を正当に評価してもらい、医院の価値(バリュー)を高めたい」 そのためには、単なる「話し方」のテクニックではなく、経営の数字に基づいた「無理のない仕組み」が必要だと考え、当事務所へ相談に来られました。
当事務所からのご提案
H院長の課題は、カウンセリングが「院長の場当たり的な説明」になっていたことでした。私たちは**「キャッシュアップ顧問(スタンダード)」**として、自費率を自然に高めるための以下の経営インフラを構築しました。
診療フローへの「カウンセリング・タイム」の組み込み
まず、アポイント表を見直し、初診時や治療計画提示時に「説明のための15分」をルールとして組み込みました。 「チェアサイドで治療の合間に話す」のではなく、専用のコンサルスペースを活用し、患者さんが落ち着いて選択できる環境を整備。院長が一人で話すのではなく、歯科衛生士が事前に患者さんの希望や不安をヒアリングする連携フローを作成しました。これにより、院長の説明が「セールス」ではなく、患者さんの悩みに応える「解決策の提示」へと変わりました。
自費診療による「キャッシュフロー改善」のシミュレーション
自費率が10%から20%、25%へと上がった際に、医院の通帳残高がどう推移するかを1円単位でシミュレーションしました。 自費が増えることで生まれる利益を、最新の口腔内スキャナーの導入や、スタッフの福利厚生にどう充てられるかを具体的に提示。数字の裏付けがあることで、院長自身の「自費を勧めることへの罪悪感」が、「より良い医療を提供し、医院を存続させるための経営責任」というポジティブな意識へと変換されました。
技工料・材料費の適正比率の維持と評価
自費率の向上に伴い、高額になりがちな外注技工料の比率をモニタリングしました。 売上に対する技工料・材料費の合算を適正範囲内に収めるための管理表を導入。また、自費成約に至った背景(スタッフの協力等)を可視化し、それを定期的な面談でフィードバックする仕組みを構築しました。これにより、医院全体のモチベーションが「より価値の高い自由診療の提供」へと向かうサイクルが出来上がりました。
お客様の声
「自費率は、テクニックではなく仕組みで決まるんですね」 当事務所に相談して、一番の気づきでした。これまでは自分の説明不足を嘆いてばかりでしたが、カウンセリングの時間と場所を確保し、スタッフと役割分担をするだけで、患者さんから『自費でお願いします』と言っていただける機会がこれほど増えるとは思いませんでした。
結果として、自費率は10%から25%まで上昇し、経営的な余裕が全く違います。無理に売り込んだ感覚は一切なく、むしろ患者さんから『丁寧に説明してくれてありがとう』と感謝されることが増えたのが、歯科医師として何よりの喜びです。
以前は『保険診療で忙しいのは美徳』だと思っていましたが、今は『高い価値を提供し、しっかり利益を残して再投資する』ことが、患者さんへの最大の貢献だと確信しています。数字の面から背中を押してくれたおかげで、一歩踏み出すことができました。