事例の背景
「父の功績には報いたい。でも、多額の退職金を払って自分の代の経営は大丈夫なのか、本音では不安でした」 東京都内で父が築き上げた医院を継ぐことになったA先生(30代)は、言葉にできないプレッシャーを感じていました。
父院長は「お前の好きにしろ」と言いつつも、自分がこれまで築いてきた資産や、スタッフへの退職金、そして自分自身の老後資金について、具体的な数字を出すことを避けていました。一方でA先生は、承継を機にデジタル設備の導入やユニットの増設を構想していましたが、父への「恩返し」と「投資」のバランスをどう取るべきか、親子ゆえに踏み込んだ話ができずにいました。
「お金の話で、これまでの親子の信頼関係を壊したくない」 以前の会計事務所は「お二人で話し合ってください」と逃げ腰。そこで、歯科専門の承継実務に精通し、第三者として公平な「出口と入り口」を設計してくれる当事務所へ相談に来られました。
当事務所からのご提案
A先生親子の課題は、「父の引退(出口)」と「息子の開業(入り口)」を切り離して考えすぎていることにありました。私たちは**「相続・事業承継コンサルティング」**として、以下の承継スキームを提示しました。
法定上限を意識した「適正かつ最大」の退職金算定
父院長が長年積み上げてきた功績を数値化し、税務署から否認されない範囲で最大限の退職金を算定しました。 これを一時金として支払うことで、父院長には「リタイア後の安心」を、医院側には「経費計上による大幅な所得税の節税」というメリットを創出。この節税で浮いたキャッシュを、そのまま承継後の運転資金に充てる「一石二鳥」のプランを作成しました。
承継時の「借入金リファイナンス」による返済負担の軽減
父の代から残っていた古い借入金を精査し、A先生が引き継ぐタイミングで最新の低金利融資へ借り換え(一本化)を行いました。 返済期間を再設定することで、月々のキャッシュアウトを大幅に圧縮。これにより、A先生が切望していた最新CTやマイクロスコープの導入資金を新たに確保しても、トータルの月額返済額を承継前と同等に抑える「攻めの財務設計」を構築しました。
親子間での「経営権と所有権」の明確な分離
診療方針やスタッフの評価、さらには将来の相続税対策まで含めた「承継ロードマップ」を作成しました。 「いつ、どのタイミングで名義を変えるか」「不動産の賃貸借契約はどうするか」といったデリケートな問題を、第三者である私たちが仲介して明文化。親子での「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、スタッフに対しても「新しい体制になっても経営は揺るがない」という安心感(ガバナンス)を示しました。
お客様の声
「第三者が数字を持って間に入ってくれたことで、父と初めて『経営者同士』として話ができました」 当事務所に作成してもらった承継シミュレーションは、父を納得させるのに十分な説得力がありました。父の老後資金をしっかり確保した上で、私の代での投資余力も示してくれたので、父も安心してバトンを渡してくれました。
承継と同時にリニューアルを行いましたが、リファイナンスのおかげで資金繰りに苦労することなく、理想のスタートが切れました。以前のままだったら、お互い遠慮して何も変わらないまま衰退していたかもしれません。
『親子だからこそ、プロの仲介が必要だ』。今、承継を終えて心からそう思います。父が守ってきた地域医療のバリューを、私なりの新しい形でさらに高めていく準備が整いました。