事例の背景
「外注費にしておけば、消費税も控除できるし社会保険料もかからない。そう前の税理士に言われていたのですが……」 都内で大規模な医院を経営するT理事長。高い技術を持つフリーランスの歯科衛生士3名と、専属の技工士に、月額100万円近い「外注費」を支払っていました。
しかし、当事務所が監査に入った際、その実態に愕然としました。シフトは医院が指定し、材料や道具もすべて医院が提供。仕事の進め方も院長の指示に従っている。これは税法上、**「形式が外注であっても、実態は給与」**とみなされる典型的なパターンでした。 もし税務調査が入れば、過去数年分に遡って「控除した消費税の取り消し」と「源泉所得税の徴収漏れ」を指摘され、多額の重加算税を含めた追徴課税が発生する恐れがありました。
「目先の節税のために、取り返しのつかない爆弾を抱えていたことに気づかされました」 経営のバリューを損なう致命的なリスクを、調査が入る前に解消したい。その決断により、財務の適正化プロジェクトが始まりました。
当事務所からのご提案
T理事長の課題は、**「形式と実態の乖離」でした。私たちは「キャッシュアップ顧問(エグゼクティブ)」**として、以下のリスクマネジメントを断行しました。
「外注 vs 給与」の5要件に基づいた緊急診断
税制上の判断基準である「自己の計算とリスクにおいて事業を行っているか」「指揮監督を受けているか」「代替性があるか」などの5要件を、個々のスタッフごとに精査。 「外注」として通すにはあまりにリスクが高いスタッフを特定し、理事長にその「否認された場合の推定損失額(数百万円単位)」を提示することで、適正化の必要性をロジカルに説明しました。
実態に即した契約の切り替えと「代替的な節税」の提案
リスクの高いスタッフについては、本人たちと対話し、社会保険完備の「給与所得者」へと契約を切り替えました。 当然、そのままでは医院の消費税負担が増え、社会保険料も発生します。そこで、これまでの事例でも紹介した**「役員社宅規定」や「旅費規定」、「倒産防止共済」**をフル活用。外注費という「危うい節税」から、法律で守られた「盤石な節税」へポートフォリオを組み替え、トータルの税負担を同等レベルまで抑えるスキームを構築しました。
税務調査を意識した「証憑(しょうひょう)管理」の徹底
どうしても外注として残す技工士等については、業務委託契約書を整備し、請求書の形式から「指揮命令系統がないこと」を証明する日報の管理まで指導。 エグゼクティブ顧問として、万が一の税務調査時に「これは正当な外注費である」と反論できるエビデンスを平時から積み上げる体制(ガバナンス)を確立しました。
お客様の声
「『調査が来てからでは遅い』。その言葉の重みを、今の安定した経営の中で噛み締めています」 以前の税理士は、リスクを知ってか知らずか、私に良い顔をするために外注処理を認めていました。しかし、当事務所は『理事長の資産を守るために、今ここを正すべきだ』とはっきり進言してくれました。
契約を切り替えたことで、スタッフも『医院の一員』としての帰属意識が高まり、結果として定着率が向上するという副次的なバリューも生まれました。
何より、いつ来るか分からない税務調査の影に怯えることがなくなったのが最大の収穫です。プロによる『正しいリスク管理』こそが、長期的な経営のバリューを最大化するのだと痛感しました。