事例の背景
「医療法人社団として組織を整えようとクラウド化したはずが、以前よりも事務作業が増えて、毎日数字と格闘しているんです……」
東京都内で複数のクリニックを運営する医療法人社団の事務長、M様。セカンドオピニオンのご相談をいただいた際、その表情には深い疲労の色が浮かんでいました。
数年前、当時の顧問税理士から「これからはクラウド会計の時代です。導入すれば事務作業は自動化され、経営数字もリアルタイムで見られるようになりますよ」と強く勧められ、導入コストをかけてシステムを刷新されたそうです。しかし、現実は理想とは程遠いものでした。
医療法人社団特有の窓口現金管理や、複数の口座、各拠点でのカード利用の同期がうまくいかず、画面には毎日エラー通知や領収書の二重取り込みなど山積み。結局、M事務長が通帳と画面を照らし合わせ、仕訳を手入力し直す日々が続いていました。「自動化」されたはずのシステムを動かすために、皮肉にもM様の残業時間は以前の1.5倍に。
前任の税理士に相談しても「使いこなせば楽になりますから」と、医療現場の実務を無視した精神論ばかり。自力で解決しようと夜遅くまで設定をいじり、マニュアルを読み込みましたが、調べれば調べるほど泥沼にハマる感覚だったといいます。「事務長が”倒れては”法人の運営が止まる」という強い焦燥感から、セカンドオピニオンを求めて当事務所の門を叩かれました。
当事務所からのご提案
今回、私たちがセカンドオピニオンとして状況を分析し、最初にお伝えしたのは「医療法人社団の複雑な経理を、現場の事務スタッフや事務長だけで『自動化』しきるのは極めて困難である」という現実的な視点でした。
前任者は「自計化(自分たちで入力すること)」が正解だと信じて疑わなかったようですが、事務長が本来やるべきは「入力作業」ではなく「経営判断のサポート」です。そこで私は、以下の3つのステップで抜本的な再構築をご提案しました。
① 「名ばかり自動連携」の停止と再設計
エラーの温床となっていた銀行やカードの連携設定を一度リセットしました。医療法人の入金フロー(窓口、社保、国保、自費診療)を細かく分析し、無理に自動化せず、あえて手動データを吸い上げる形にするなど、確実に動作する連携ルールを再定義しました。
② 複雑な勘定科目の「医療法人特有ルール」の整備
M事務長を悩ませていたのは、特殊な経理処理の判断でした。これを解決するため、当事務所で過去の取引をすべてパターン化。ソフト内の自動学習機能をチューニングし、AIが間違った推論をしないよう「効率的に使うためのクラウド設定」へと作り替えました。
③ 「自計化」の断念とフルアウトソーシングへの移行
これが最も重要な提案でしたが、事務長が自ら入力を完結させることを辞めていただきました。資料をスキャンして当事務所へ送るだけで、残りの入力・確認・修正はすべて当事務所が代行する運用へ切り替えました。「自分たちでやらなきゃいけない」というタスクを戦略的に放棄していただくことで事務長は理事長を支える本来の業務に専念できるようになります。
「ITを使いこなすこと」ではなく、「事務負担をゼロに近づけること」をゴールに据えたロードマップを提示させていただきました。
お客様の声
「せっかく導入したんだから使いこなさなきゃ」と一人で抱え込んでいましたが、先生に「もう頑張らなくていいですよ」と言われ、本当に救われました。
医療法人社団という組織上、理事長(院長)への数字の報告は絶対ですが、以前は数字が合わなすぎて報告が遅れ、不信感を持たれそうになったこともあります。今回、セカンドオピニオンをお願いして運用の仕組みをプロ目線で変えていただいたおかげで、私の残業時間は劇的に減り、採用や労務といった重要な課題に時間を使えるようになりました。
もっと早く相談すればよかったです。今の税理士さんに「クラウドはこんなものです」と言われて納得できない方は、ぜひ専門家による「運用の再設計」を検討されることをお勧めします。