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歯科医院の節税対策7選|「やる順番」と落とし穴を公認会計士が解説【動画付き】

  • 投稿:2026年07月24日
  • 更新:2026年08月14日
歯科医院の節税対策7選|「やる順番」と落とし穴を公認会計士が解説【動画付き】

「利益は出ているのに、税金で持っていかれて手元にお金が残らない」——歯科医院を経営される院長先生から、当事務所に最も多く寄せられるお悩みです。

個人開業の歯科医院の場合、課税所得が900万円を超えると所得税・住民税を合わせた負担率は約43%、1,800万円を超えると約50%に達します。稼いだ半分が税金、という水準です。ここに手を打たない理由はありません。

ただし、節税にはやってよい順番があります。順番を間違えると、「税金は減ったのに、それ以上に現金が出ていって、かえって資金繰りが苦しくなる」——いわゆる節税貧乏に陥ります。

この記事では、歯科医院が使える節税策7つを、お金が出ていかないものから順に整理します。顧問先の約半数を歯科医院が占める公認会計士の視点で、それぞれの効果額・注意点・優先順位まで解説します。

この記事でわかること

  • 歯科医院がやるべき節税7つと、その正しい順番
  • それぞれいくら税金が減るのか(具体的な金額感)
  • 陥りがちな「節税貧乏」を避ける、手元資金ベースの考え方

まずは3分で全体像|当事務所の解説動画

本記事の要点は、当事務所のYouTubeチャンネル「ドクターのための会計税務ch」でも解説しています。文章を読む前に、まず動画で全体像をつかみたい先生はこちらをご覧ください。

※動画では、少額減価償却資産の特例・概算経費の特例・青色申告事業専従者給与・小規模企業共済・医療法人化の5つを取り上げています。本記事ではこれに経営セーフティ共済とiDeCoを加え、「やる順番」の観点で再整理しています。

節税の大原則|「お金が出ていかない節税」から手をつける

具体的な手法に入る前に、最も大切な考え方をお伝えします。節税策は、大きく2種類に分けられます。

タイプ 内容 やる順番
A:お金が出ていかない節税 制度の選択・会計処理の工夫で税金を減らす。追加の支出は不要 最優先
B:お金が出ていく節税 共済・保険などにお金を払い、その分を経費・控除にする Aの後、余力の範囲で

鉄則は、「Aを全部やり切ってから、Bを検討する」です。

Bの手法は「お金を払えば税金が減る」ため一見お得に見えますが、払った額のうち税金として戻ってくるのは税率分(最大でも半分)だけです。100万円払って、税金が50万円減っても、手元の現金は50万円減っています。将来戻ってくるお金(共済の解約金など)だとしても、その間は資金が拘束されます。これが「節税貧乏」の正体です。

以下、この順番に沿って7つの手法を解説します。

【お金が出ていかない節税】まず全部やるべき4つ

①少額減価償却資産の特例|30万円未満は即・全額経費

通常、10万円以上の器具・備品は「固定資産」として、耐用年数にわたり少しずつ経費化(減価償却)します。しかし青色申告をしている歯科医院なら、取得価額30万円未満の資産は、購入した年に全額を一度に経費にできます(年間合計300万円まで)。

歯科医院では、ハンドピース、光照射器、口腔内カメラ、パソコン、応接セット、待合室の備品など、30万円未満の設備投資が数多く発生します。これらを「資産計上して数年で償却」ではなく「その年に全額経費」にできるため、利益が出た年ほど効果が大きくなります。

  • 対象:取得価額30万円未満/青色申告者/年間合計300万円まで
  • 追加の支出は不要(どうせ買うものを、買った年に落とせる)

※この特例は適用期限が定められており、延長を繰り返しています。また少額資産の基準額は税制改正の対象になり得ます。適用年の最新の取扱いをご確認ください。

②概算経費の特例(措置法26条)|社保診療が多い医院の切り札…だが注意点あり

租税特別措置法第26条は、歯科医院ならではの強力な特例です。社会保険診療報酬が年5,000万円以下、かつ医業収入が年7,000万円以下の場合、社会保険診療にかかる経費を、実際の額ではなく概算経費率で計算できます。

概算経費率は、社会保険診療報酬の額に応じて次のように決まります。

社会保険診療報酬の金額 概算経費率
2,500万円以下 72%
2,500万円超〜3,000万円以下 70% + 50万円
3,000万円超〜4,000万円以下 62% + 290万円
4,000万円超〜5,000万円以下 57% + 490万円

実際にかかった経費より、概算経費率で計算した額のほうが大きくなる場合、その差額分だけ所得が圧縮され、節税になります。人件費や家賃を抑えて運営している医院ほど、効果が出やすい特例です。実額と概算の、有利なほうを毎年選べます。

ただし、ここに大きな落とし穴があります。 概算経費を選ぶと、社会保険診療に対応する経費は「概算」で固定されるため、設備投資をしても、その減価償却費が節税に直結しません。①の少額減価償却の特例や、高額なCT・ユニットの償却費が、社保診療部分については活きなくなるのです。

つまり、「大きな設備投資をする年」と「措置法26条を使う年」は、相性が良くありません。設備投資の計画と、措置法26条の適用は、必ずセットでシミュレーションする必要があります。ここは自己判断が難しく、会計事務所の腕が最も問われるところです。

③青色申告事業専従者給与|家族への給与で所得を分散

院長先生の配偶者やご家族が、受付・経理・診療補助などで医院の仕事を手伝っている場合、その方へ支払う給与を経費にできます(青色事業専従者給与)。

所得税は累進課税なので、院長一人に所得が集中するより、家族に分散したほうが世帯全体の税負担は軽くなります。院長の所得の一部を、税率の低い家族に移すイメージです。

  • 事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要
  • 実際に勤務している実態と、業務に見合った金額であることが前提

注意点:勤務実態がないのに給与を出したり、業務内容に対して過大な金額を設定すると、税務調査で否認されます。「名ばかり専従者」は歯科の税務調査で狙われやすい論点です。勤務日報や業務内容の記録を残しておきましょう。

④iDeCo(個人型確定拠出年金)|掛金が全額所得控除

iDeCoは、自分で積み立てる私的年金です。掛金が全額所得控除になるうえ、運用益も非課税という、税制上とても有利な制度です。

個人事業主の歯科医師(国民年金第1号被保険者)の場合、掛金の上限は月6.8万円(国民年金基金等と合算)と、会社員より大きく設定されています。所得の高い院長ほど、控除による節税効果が大きくなります。

iDeCoは「Bのお金が出ていく節税」に近い性質もありますが、①老後資金の準備を兼ねられること、②少額から始められ資金拘束の負担が軽いことから、優先度の高い枠として位置づけています。

※iDeCoは原則60歳まで引き出せません。当面の運転資金を確保したうえで、無理のない範囲で。

【お金が出ていく節税】余力に応じて検討する2つ

ここからは、お金を払うことで経費・控除を作る手法です。効果は大きいものの、現金が出ていくため、A群をやり切ったうえで、手元資金に余裕がある範囲で検討します。

⑤小規模企業共済|院長の退職金を、節税しながら準備

小規模企業共済は、個人事業主が自分の退職金を積み立てる制度です。掛金は月最大7万円(年84万円)で、その全額が所得控除になります。

受け取るときは退職所得または公的年金等として扱われ、通常の所得より税負担が軽くなります。積むときも受け取るときも税制優遇という、開業医と非常に相性の良い制度です。

項目 内容
掛金 月1,000円〜7万円(年最大84万円)
税務上の扱い 掛金全額が所得控除
受取時 退職所得または公的年金等(優遇あり)

課税所得が高い院長であれば、年84万円の掛金で、その半分近い税額が軽減されます。まず優先すべきB群の手法です。

⑥経営セーフティ共済(倒産防止共済)|掛金が全額経費

取引先の倒産に備える共済ですが、掛金が全額経費になるため、節税策としても使われます。掛金は月最大20万円(年240万円)、累計800万円まで積み立てられます。

40か月以上積み立てれば、解約時に掛金が全額戻ってきます。「経費にしながら、お金を貯めておける」のが特徴です。

注意点:解約して受け取る解約手当金は、その年の収入(益金・事業所得)になり課税されます。つまり「税金の繰り延べ」であって、出口で利益が出る年に解約すると節税効果が相殺されます。設備投資や赤字の年など、出口の計画とセットで使うべき制度です。また、2024年10月以降、解約後に再加入した場合、一定期間は掛金を損金・経費にできない改正が入っています。

※経営セーフティ共済の取扱いは近年改正が入っています。加入・解約の判断は、必ず最新のルールと出口計画を踏まえてご検討ください。

【最終手段】医療法人化|所得1,500万〜1,800万円が判断ライン

ここまでの個人での節税をやり切ってもなお税負担が重い場合、次のステージが医療法人化です。

個人の所得税は最高で約55%(所得税45%+住民税10%)まで上がりますが、法人税の実効税率は所得水準にかかわらず概ね30%前後で頭打ちです。所得が一定ラインを超えると、法人化したほうが有利になります。

一般的な判断の目安は、課税所得(医院の利益)が年1,500万〜1,800万円を安定して超えてきたあたりです。医療法人化には次のようなメリットがあります。

  • 院長へ「役員報酬」を支払い、給与所得控除を使える
  • 所得を法人・院長・家族役員に分散できる
  • 生命保険や退職金の設計の幅が広がる
  • 分院展開・事業承継がしやすくなる

一方で、社会保険への加入義務、設立・運営コスト、医療法人からのお金の持ち出し制限(配当禁止)など、デメリット・制約もあります。「法人化すれば必ず得」ではありません。 シミュレーションで、法人化前後の手取りが実際にいくら変わるのかを数字で確認してから判断すべきです。

医療法人化は、この記事の他の手法と違って後戻りが難しい意思決定です。詳しくは別記事「歯科医院の医療法人化、判断ラインは所得いくらから?」で解説します(※内部リンク)。

要注意|「節税のための節税」がもたらす3つの失敗

最後に、当事務所に「他所でこう言われた/こうしてしまった」とご相談に来られるケースから、典型的な失敗を挙げておきます。

失敗1:不要な高額設備を「節税のために」買う

「利益が出そうだから、CTを買って経費にしましょう」——診療に本当に必要なら良いのですが、節税だけが目的なら本末転倒です。1,000万円の設備で減る税金はせいぜい300〜500万円。差額の現金は確実に出ていきます。

失敗2:出口を考えずに共済・保険に入りすぎる

⑥で触れたとおり、解約時に課税される制度は「繰り延べ」にすぎません。入口だけ見て加入し、出口で利益の出る年に解約すると、節税効果は消えます。

失敗3:手元資金を無視して節税に走る

節税でお金を動かした結果、いざという時の運転資金が枯れては元も子もありません。設備の入れ替え、スタッフ採用、不測の事態——歯科医院の経営には現金が要ります。節税は、必要な手元資金を確保したうえで行うものです。

まとめ|歯科医院の節税は「順番」がすべて

本記事で解説した7つの手法を、優先順位順に一覧にまとめます。

手法 タイプ ポイント
1 少額減価償却資産の特例 出ていかない 30万円未満は即経費
2 概算経費の特例(措置法26条) 出ていかない 社保中心の医院に有効/設備投資と相性注意
3 青色事業専従者給与 出ていかない 家族へ所得分散/実態必須
4 iDeCo ほぼ出ていく 掛金全額控除+老後資金
5 小規模企業共済 出ていく 退職金準備・入口も出口も優遇
6 経営セーフティ共済 出ていく 全額経費/出口計画とセット
7 医療法人化 ステージ変更 所得1,500〜1,800万円が目安

節税は、手法を知っているかどうかより、自院の状況に合わせて正しい順番で組み合わせられるかで結果が変わります。とくに歯科医院は、措置法26条と設備投資の関係など、判断の難しい論点が多い業種です。

椿公認会計士事務所は、顧問先の約半数を歯科医院が占める会計事務所です。個人開業の先生から医療法人まで、それぞれの利益水準・診療構成・将来計画に合わせた節税プランをご提案しています。

「うちの医院は、今どの手法をどこまでやるべきか」——初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 歯科医院で一番効果の大きい節税は何ですか?

A. 医院の状況によって異なります。社会保険診療の割合が高い医院では概算経費の特例(措置法26条)、利益水準が高い医院では医療法人化のインパクトが大きくなります。ただし、まずは「お金が出ていかない節税」を優先するのが原則です。

Q2. 少額減価償却資産の特例は、いくらまで使えますか?

A. 取得価額30万円未満の資産について、年間合計300万円まで、購入した年に全額を経費にできます。青色申告をしていることが条件です。

Q3. 措置法26条(概算経費)は誰でも使えますか?

A. 社会保険診療報酬が年5,000万円以下、かつ医業収入が年7,000万円以下の個人開業医が対象です。実額経費と概算経費の有利なほうを選べますが、設備投資の多い年は不利になることがあるため、事前のシミュレーションが重要です。

Q4. 家族への給与はいくらまで経費にできますか?

A. 金額の上限は法律で決まっているわけではなく、実際の勤務内容に見合った金額であることが求められます。勤務実態のない給与や過大な金額は、税務調査で否認されます。事前に届出書の提出も必要です。

Q5. 小規模企業共済と経営セーフティ共済は、どちらを優先すべきですか?

A. 一般には、掛金が全額所得控除で受取時も優遇される小規模企業共済を優先します。経営セーフティ共済は解約時に課税されるため、出口の計画とセットで検討します。

Q6. 節税のために設備を買ったほうがいいですか?

A. 診療に必要な設備であれば有効ですが、節税だけを目的に不要な設備を買うのはおすすめしません。減る税金より、出ていく現金のほうが大きいためです。

Q7. 医療法人にすると、どのくらい税金が変わりますか?

A. 個人の所得税は最高約55%、法人税の実効税率は約30%前後です。課税所得が年1,500万〜1,800万円を安定して超えると、法人化が有利になり始めるのが一般的な目安です。実際の効果はシミュレーションで確認が必要です。

Q8. 「節税貧乏」とは何ですか?

A. 税金を減らすことにこだわるあまり、それ以上に現金を支出してしまい、かえって資金繰りが苦しくなる状態を指します。節税は、必要な手元資金を確保したうえで行うべきものです。

Q9. iDeCoと小規模企業共済は両方入れますか?

A. 両方加入できます。それぞれ別枠で所得控除を受けられるため、資金に余裕があれば併用が有効です。ただしいずれも中途の引き出しに制約があるため、無理のない掛金設定が大切です。

Q10. 節税の相談は、いつすればいいですか?

A. 決算・確定申告の直前ではなく、利益の見通しが立つ期の途中がおすすめです。多くの節税策は年内・期中に手を打っておく必要があり、申告時点では間に合わないものが少なくありません。


参考・出典

  • 租税特別措置法第26条(社会保険診療報酬の所得計算の特例)/第28条の2(少額減価償却資産の特例)
  • 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」
  • 国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)」

※本記事は2026年7月時点の税制に基づいて作成しています。税制・各制度の要件は改正されることがあります。実際の適用にあたっては、必ず最新の情報と個別の状況をご確認ください。具体的な節税の可否は税務相談の対象となります。

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