椿 祐輔
監査法人・会計事務所での実務を経て、2012年に椿公認会計士事務所を開設。富裕層を対象としたプライベートバンク業務にて、「個人」と「法人」の資金設計や資産管理を行ってきた経験を活かし、歯科医院の“お金が残らない”という悩みに応えるキャッシュアップ支援を行っている。
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[相続・事業承継業務]
親が亡くなってから14日目までにやるべきことを、やる順番に沿って5つに整理します。さらに、その先に控える相続手続き(相続放棄・準確定申告・相続税)の全体像と、歯科医院を営む親が亡くなった場合の追加手続きまで、公認会計士の立場でご案内します。
親が亡くなった直後は、深い悲しみの中で「期限のある手続き」が次々と押し寄せます。何を、いつまでに、どこへ届け出ればよいのか、多くの方が戸惑われます。
特に亡くなった当日から14日目までは、期限の短い手続きが集中する最初の山場です。ここでの動き方を知っておくだけで、慌てず抜け漏れなく進められます。
この記事では、親が亡くなってから14日目までにやるべきことを、やる順番に沿って5つに整理します。さらに、その先に控える相続手続きや、歯科医院を営む親が亡くなった場合の追加手続きまで、公認会計士の立場でご案内します。
当日から14日目までの流れは、当事務所のYouTubeチャンネル「椿公認会計士の相続とお金」でも解説しています。まず全体像をつかみたい方は、こちらの動画からご覧ください。
これから解説する5つの手続きを、期限の短いものから順に時系列で確認しましょう。
| 時期 | やること | 期限・届出先 |
|---|---|---|
| 当日〜 | 死亡診断書の受け取り、葬儀社の手配 | 病院・葬儀社 |
| 7日以内 | 死亡届の提出・火葬許可の申請 | 市区町村役場 |
| 10日以内 | 厚生年金の受給停止 | 年金事務所 |
| 14日以内 | 国民年金の受給停止、世帯主変更、健康保険・介護保険の資格喪失 | 年金事務所・役場 |
| すみやかに | 金融機関への連絡(口座凍結)、名義変更・解約 | 各金融機関・事業者 |
最初の手続きは、死亡診断書の受け取りと死亡届の提出です。葬儀の日程にも直結するため、まずここを確実に進めましょう。
死亡診断書は、亡くなった病院の医師から発行されます。自宅などで亡くなった場合は、死体検案書という形で発行されます。
この書類は死亡届と一体になった用紙で、以降の手続きの起点になります。受け取ったら内容を確認し、大切に保管してください。
死亡診断書は、原本を役場に提出すると手元に残りません。しかし後々、さまざまな場面で「死亡を証明する書類」が必要になります。
生命保険の請求、金融機関の手続き、年金の手続きなどが典型です。提出前に、コピーを5〜10部ほど取っておくと、後の手続きが格段にスムーズになります。
死亡届は、亡くなったことを知った日から7日以内に、市区町村役場へ提出します。死亡診断書と一体の用紙で提出します。
提出は葬儀社が代行してくれることも多い手続きです。期限が短いため、早めに準備を進めておくと安心です。
死亡届を提出すると、火葬に必要な火葬許可証が交付されます。これがなければ火葬を行えません。
葬儀の日程に直結するため、実務上は葬儀社が死亡届の提出とあわせて代行してくれることも多い手続きです。
死亡診断書の受け取りと並行して、葬儀・火葬の手配を進めます。慌ただしい数日間が続きますが、相続の観点から押さえておきたい点があります。
まず近親者へ連絡し、ご遺体の搬送と安置を手配します。病院で亡くなった場合は、安置先への搬送を早めに決める必要があります。
搬送は葬儀社に依頼するのが一般的です。連絡先が定まっていない場合は、この段階で葬儀社を選ぶことになります。
葬儀社との打ち合わせでは、通夜・告別式・火葬の日程や規模、費用の見積もりを確認します。慌ただしい中でも、内容と金額の確認は大切です。
死亡届の提出や火葬許可の申請を代行してくれる葬儀社も多くあります。どこまで任せられるかを確認しておくと負担が軽くなります。
相続の観点で一つ覚えておきたいのは、葬儀にかかった費用の領収書は必ず保管しておくことです。通夜・告別式・火葬・お布施などの葬儀費用は、相続税を計算するうえで相続財産から差し引けます。
領収書がないお布施なども、支払った記録(日付・金額・相手)をメモに残しておけば控除の対象にできる場合があります。相続税がかかるご家庭では、この積み重ねが最終的な税額に効いてきます。
なお香典返しの費用や、初七日・四十九日などの法要費用は、原則として葬儀費用に含められません。線引きが難しいため、判断に迷う場合は専門家にご確認ください。
亡くなった方が年金を受け取っていた場合、年金の受給を停止する手続きが必要です。放置すると、受け取る権利のない年金を受け取ってしまい、後で返還を求められます。
受給停止の期限は年金の種類で異なります。厚生年金は亡くなってから10日以内、国民年金は14日以内が目安です。
期限が短いため、他の役場手続きとあわせて早めに動くことが大切です。うっかり放置しないよう注意しましょう。
受給停止の手続きは、年金事務所で行います。死亡を証明する書類や年金証書などが必要になります。
なお、日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合、受給停止の届出が原則不要になることがあります。ご自身のケースについては年金事務所にご確認ください。
まだ受け取っていない年金(未支給年金)がある場合は、一定の遺族が請求できます。また、遺族年金の対象になるケースもあります。
これらは受給停止と同じタイミングで、年金事務所で確認しておくと二度手間になりません。まとめて相談するのがおすすめです。
役場で行う期限14日以内の手続きが、まとまってあります。同じ窓口で済ませられるものが多いため、まとめて手続きすると効率的です。
亡くなった方が世帯主で、残された世帯員が2人以上いる場合、新しい世帯主を届け出ます。期限は14日以内です。
世帯員が1人だけになる場合など、届出が不要なケースもあります。ご自身の状況を窓口で確認しておくと安心です。
国民健康保険・後期高齢者医療の場合、資格喪失の届出と保険証の返却を行います(14日以内)。会社の健康保険に加入していた場合は、勤務先を通じて手続きします。
あわせて、葬祭費・埋葬料といった給付を受けられることがあります。もらい忘れがないよう、窓口で確認しておきましょう。
介護保険の被保険者だった場合、資格喪失の届出と被保険者証の返却を行います。期限は14日以内です。
世帯主変更や健康保険の手続きと同じ役場で行えるため、あわせて済ませると効率的です。必要書類を事前に確認しておきましょう。
5つ目は、金融機関への連絡です。ここは、順番と判断に注意が必要なポイントです。凍結の仕組みを理解したうえで進めましょう。
金融機関が名義人の死亡を把握すると、その口座は凍結されます。凍結のタイミングは、遺族からの連絡や金融機関が死亡を知った時点によります。
凍結されると、預金の引き出し、公共料金などの自動引き落とし、家賃収入の受け取りなどがすべて止まります。相続手続きが済むまで、原則としてお金を動かせなくなります。
凍結される前に、公共料金・家賃・サブスクなど、その口座からの引き落とし・入金を把握しておきましょう。あわせて、葬儀費用など当面必要な支払いの資金繰りも考えておきます。
なお、遺産分割前でも、一定額までは「預貯金の仮払い制度」で引き出せます。「まだ凍結されていないから」と安易に引き出すと、後の遺産分割でトラブルになることがあるため注意が必要です。
電気・ガス・水道・電話・NHK・各種サブスクリプションなどの名義変更や解約も、気づいたものから進めます。故人名義のクレジットカードの解約も忘れがちです。
口座が凍結された後にお金を引き出すには、相続手続きを経る必要があります。金融機関ごとに求められる書類が異なります。
戸籍謄本や遺産分割協議書などが必要になるのが一般的です。手続きに時間がかかるため、早めに各金融機関へ確認しておくと安心です。
当日〜14日目の山場を越えても、相続の手続きは続きます。ここから先は少し時間がありますが、いずれも重要です。全体像を押さえておきましょう。
| 期限 | 手続き | ポイント |
|---|---|---|
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の判断 | 借金が多い場合はここで判断。過ぎると原則できない |
| 4か月以内 | 準確定申告 | 事業所得・不動産所得等があった場合の所得税申告 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付 | 遺産分割・財産評価を経て申告。納税資金の準備も |
借金や連帯保証が財産を上回る可能性がある場合の3か月以内の相続放棄は、判断を誤ると取り返しがつきません。期限を過ぎると原則できなくなります。
限定承認という選択肢もあります。いずれにしても、財産と負債の全体像を早めに把握することが大切です。
相続税の申告・納付は10か月以内です。遺産分割や財産評価を経て申告するため、想像以上に時間がかかります。納税資金の準備も並行して進めましょう。
また、亡くなった方に事業所得や不動産所得があった場合は、4か月以内の準確定申告が必要になり、通常より手間がかかります。
亡くなった親が歯科医院の院長・理事長だった場合、一般的な手続きに加えて医院ならではの手続きが発生します。診療を止めるのか引き継ぐのかの判断、保険医療機関の廃止・承継の届出などです。
さらに、事業所得を含む準確定申告、スタッフの給与・社会保険の手続き、医療法人の場合は理事長の変更や出資持分の相続も加わります。これらは専門的で期限もタイトです。
詳しくは別記事「歯科医院の相続手続き」で、個人開業・医療法人のパターン別に解説しています。生前の準備については「歯科医院の贈与・相続時精算課税」もあわせてご覧ください。
14日目までにやるべきことは、①死亡診断書の受け取りと死亡届(7日以内・コピーは多めに)、②葬儀の手配(領収書は保管)、③年金の受給停止(厚生年金10日・国民年金14日以内)、④世帯主変更・健康保険・介護保険の資格喪失(14日以内)、⑤金融機関への連絡(凍結前に資金繰り確認)の5つです。
14日を過ぎたら、3か月・4か月・10か月の相続手続きへと進みます。やるべきことの順番をあらかじめ知っておくことが、ご家族の負担を大きく軽くします。
椿公認会計士事務所は、相続の手続きから相続税の申告、生前の対策までを一貫してご支援しています。とくに歯科医院を営むご家庭の相続には、医業特有の論点も含めて対応しています。初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
Q1. 親が亡くなったら、最初に何をすればいいですか? まず医師から死亡診断書を受け取り、7日以内に市区町村役場へ死亡届を提出します。並行して葬儀社の手配を進め、その後、年金の受給停止、世帯主変更、健康保険の資格喪失、金融機関への連絡へと進みます。
Q2. 死亡届はいつまでに出すのですか? 亡くなったことを知った日から7日以内に、市区町村役場へ提出します。死亡診断書と一体の用紙で提出し、火葬許可証の交付を受けます。葬儀社が代行してくれることもあります。
Q3. 死亡診断書はコピーしておいたほうがいいですか? はい。原本を役場に提出すると手元に残りません。生命保険の請求や金融機関・年金の手続きで死亡を証明する書類が必要になるため、提出前に5〜10部ほどコピーを取っておくと後がスムーズです。
Q4. 葬儀費用は相続税で控除できますか? 通夜・告別式・火葬・お布施などの葬儀費用は、相続財産から差し引けます。領収書やお布施の支払い記録を保管しておきましょう。ただし香典返しや初七日・四十九日などの法要費用は原則対象外です。
Q5. 年金を止める手続きの期限は? 厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内が目安です。止めないと受給権のない年金を受け取ってしまい、後で返還を求められます。未支給年金や遺族年金の確認もあわせて行いましょう。
Q6. 世帯主変更はいつまでですか? 亡くなった方が世帯主で、残された世帯員が2人以上いる場合、14日以内に新しい世帯主を届け出ます。健康保険・介護保険の資格喪失手続きも同じ14日以内なので、まとめて行うと効率的です。
Q7. 口座が凍結されると、どうなりますか? 預金の引き出しや自動引き落とし、入金がすべて止まります。相続手続きが済むまで原則お金を動かせません。凍結前に引き落とし内容と当面の資金繰りを確認し、必要なら預貯金の仮払い制度の利用を検討します。
Q8. 凍結される前なら、お金を引き出してもいいですか? 凍結前でも、安易な引き出しは避けたほうが安全です。相続財産に含まれるお金のため、後の遺産分割でトラブルになることがあります。引き出す場合は使途を記録し、他の相続人と共有しておきましょう。
Q9. 14日を過ぎたあとは、何がありますか? 3か月以内の相続放棄の判断、4か月以内の準確定申告、10か月以内の相続税の申告・納付が控えます。とくに借金が多い場合の相続放棄は期限を過ぎると原則できないため、早めの財産把握が重要です。
Q10. 親が歯科医院を経営していました。追加の手続きはありますか? あります。診療の継続・廃止の判断、保険医療機関の届出、事業所得を含む準確定申告、スタッフの手続き、医療法人なら理事長変更や出資持分の相続などです。専門性が高いため、医業に詳しい専門家への早めの相談をおすすめします。
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