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[相続・事業承継業務]

歯科医院の相続手続き|院長・理事長が亡くなったら何をするか、期限順に公認会計士が解説【動画付き】

  • 投稿:2026年07月29日
  • 更新:2026年08月14日
歯科医院の相続手続き|院長・理事長が亡くなったら何をするか、期限順に公認会計士が解説【動画付き】

歯科医院の相続手続き|院長・理事長が亡くなったら何をするか、期限順に公認会計士が解説

歯科医院を営むお父様(院長)が亡くなった——その瞬間から、ご遺族には深い悲しみと同時に、次々と期限のある手続きが押し寄せてきます。しかも歯科医院の相続には、一般のご家庭にはない「医院特有の手続き」が加わります。

この記事では、まず誰にでも共通する相続手続きを期限順に整理し、そのうえで歯科医院ならではの手続きを、個人開業・医療法人の両パターンで解説します。顧問先の約半数を歯科医院が占める公認会計士の立場から、「何を・いつまでに・誰に」届け出るのかを具体的にお伝えします。

この記事でわかること

  • 親が亡くなってから相続税申告までの、手続きと期限の全体像
  • 歯科医院(個人開業・医療法人)で追加になる、医院特有の手続き
  • 放置すると危険なポイントと、生前にできる備え

まず動画で|親が亡くなったら最初にやるべきこと

死亡直後(当日〜14日目)にやるべきことは、当事務所のYouTubeチャンネル「椿公認会計士の相続とお金」で解説しています。まず全体像をつかみたい方は、こちらの動画からご覧ください。

【全員共通】相続手続きの期限一覧|まずここを押さえる

相続の手続きには、法律で期限が定められているものが多くあります。過ぎると、相続放棄ができなくなったり、加算税・延滞税がかかったりします。まず全体像を期限順に一覧で確認しましょう。

期限 手続き 提出先など
7日以内 死亡届・火葬許可申請 市区町村役場
10〜14日以内 年金受給停止、世帯主変更、健康保険の資格喪失 年金事務所・役場
すみやかに 金融機関への連絡(口座凍結)、公共料金等の名義変更 各金融機関・事業者
3か月以内 相続放棄・限定承認の判断 家庭裁判所
4か月以内 準確定申告(亡くなった方の所得税) 税務署
10か月以内 相続税の申告・納付 税務署

とくに注意したいのが3か月4か月です。借金や連帯保証が財産を上回る場合、3か月以内に相続放棄をしないと借金を引き継ぐことになります。そして4か月以内の準確定申告は、後述するとおり、歯科医院の場合に特に重くなります。

相続手続き全体の流れ

  1. 死亡届の提出・葬儀(〜7日)
  2. 遺言書の有無を確認(自筆証書は家庭裁判所の検認、公正証書は不要)
  3. 相続人の確定(戸籍の収集)と、相続財産の調査
  4. 相続放棄するかの判断(〜3か月)
  5. 準確定申告(〜4か月)
  6. 遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
  7. 預金・不動産などの名義変更、相続登記
  8. 相続税の申告・納付(〜10か月)

【歯科特有】院長が亡くなった歯科医院で、追加で必要になる手続き

ここからが、一般の相続解説では語られない、歯科医院ならではの手続きです。医院を「個人で開業していた」か「医療法人だった」かで、やるべきことが大きく変わります。

パターンA:個人開業の歯科医院だった場合

個人開業の医院は、院長の死亡によって、その院長個人の事業として営まれていた医院が終了します。ご遺族には次の判断と手続きが発生します。

①診療を止めるのか、誰かが引き継ぐのか

院長の資格(歯科医師免許・保険医登録)は一身専属で、相続できません。ご家族に歯科医師がいなければ、その医院で保険診療を続けることはできず、廃止の手続きに進みます。ご子息が歯科医師で引き継ぐ場合は、その方が新たに開設者となって開設・登録をやり直すことになります。

②医療機関としての届出(廃止/承継)

  • 診療所の廃止届(保健所/都道府県)
  • 保険医療機関の廃止届(地方厚生局)
  • 引き継ぐ場合は、新開設者による診療所開設届・保険医療機関の指定申請

これらは「遅滞なく」行う必要があり、放置すると保険請求(レセプト)の扱いなどで問題が生じます。

③準確定申告が「医院の事業所得」で重くなる

亡くなった院長の、その年1月1日から死亡日までの所得を、4か月以内に申告します(準確定申告)。給与所得者と違い、歯科医院は事業所得があるため、売上・経費・減価償却・保険診療報酬などを締めて計算する必要があり、通常の準確定申告よりはるかに手間がかかります。窓口未収金や、死亡月の社会保険診療報酬の未収分の扱いなど、専門的な論点も多く発生します。

④従業員(歯科衛生士・受付など)への対応

  • 給与の精算、源泉徴収、離職手続き
  • 社会保険・雇用保険の資格喪失手続き
  • 引き継ぐ場合は、新開設者のもとでの再雇用手続き

⑤設備のリース・借入金

ユニットやCTのリース残債、医院の借入金がどうなるかは、契約内容と相続の仕方によって変わります。これらは相続放棄の判断(3か月)にも直結するため、早期の把握が必要です。

パターンB:医療法人だった場合

医療法人の場合、「法人」は院長の死亡では消滅しません。法人は存続し、その運営を担う人(理事長)と、出資持分の2つを引き継ぐことになります。

①理事長・管理者の変更

  • 理事長の変更(社員総会・理事会での選任、都道府県への登記・届出)
  • 医院の管理者(院長)の変更届

後任の理事長・管理者を誰にするかは、医療法人の要件(原則として医師・歯科医師であること等)を満たす必要があり、早急な検討が求められます。

②出資持分の相続——最大の税務論点

持分あり医療法人(2007年3月以前設立)の場合、亡くなった理事長が保有していた出資持分が相続財産になります。医療法人は利益を配当できず内部留保が積み上がるため、この持分の評価額が数千万円〜数億円に達していることがあり、多額の相続税がかかる可能性があります。

詳しくは別記事「歯科医院の贈与・相続時精算課税」で解説していますが、生前対策がないまま相続を迎えると、納税資金の工面に苦しむことになります(※内部リンク)。

※医療法人の準確定申告・法人の申告、理事変更登記などは、通常の相続に加えて医業特有の手続きが重なります。医業に精通した専門家の関与を強くおすすめします。

歯科医院の相続で、実際に起きやすいトラブル

トラブル1:口座凍結で、スタッフの給料・支払いが止まる

金融機関が院長の死亡を知ると、口座は凍結されます。個人口座で医院の資金を回していた場合、スタッフの給与、リース料、仕入の支払いが一斉に止まり、現場が混乱します。凍結解除には相続手続きが必要で、時間がかかります。

トラブル2:準確定申告・相続税申告に「医院の決算」が必要で間に合わない

医院の帳簿が整理されていないと、準確定申告(4か月)にも相続税申告(10か月)にも医院の数字が固まらず、期限に追われます。日頃の記帳の整い方が、いざというときの明暗を分けます。

トラブル3:相続人の間で「医院をどうするか」がまとまらない

歯科医師の相続人が医院を継ぎたい一方、他の相続人は売却・清算を望む——といった対立はよく起こります。医院(事業)は分割しにくい財産のため、遺産分割が長期化しやすいのです。

いちばんの対策は「生前」にある

ここまで読まれて、「相続が起きてからでは、あまりに大変だ」と感じられたはずです。そのとおりで、歯科医院の相続で最も効くのは生前の準備です。

  • 遺言書の作成(誰が医院を継ぎ、誰に何を渡すかを明確に)
  • 持分あり医療法人なら、出資持分の生前贈与・認定医療法人への移行の検討
  • 納税資金の準備(生命保険の活用など)
  • 後継者への計画的な承継(設備・不動産・持分)
  • 日頃の経理・資料の整備(いざというとき、決算がすぐ締められる状態に)

これらは、院長先生がお元気なうちにしか着手できません。当事務所では、生前の承継設計から、相続発生後の医院特有の手続き・申告まで、医業に精通した体制で一貫してご支援しています。

「親の医院の相続で、何から手をつければいいか分からない」「自分にもしものことがあったとき、家族が困らないようにしておきたい」——初回のご相談は無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 歯科医院を営む親が亡くなりました。まず何をすればいいですか?

A. まずは死亡届(7日以内)や葬儀など、誰にでも共通する手続きを進めます。並行して、医院の診療を止めるのか引き継ぐのかを早急に判断し、金融機関・スタッフ・リース会社への連絡を行います。医院特有の届出と準確定申告があるため、早い段階で医業に強い専門家へ相談することをおすすめします。

Q2. 親の歯科医院を、歯科医師でない私が引き継ぐことはできますか?

A. 保険診療を行う医院の開設者・管理者は歯科医師である必要があります。ご家族に歯科医師がいない場合、その医院で保険診療を続けることはできず、廃止の手続きに進みます。建物や設備などの財産は相続できますが、資格は相続できません。

Q3. 準確定申告とは何ですか?いつまでにするのですか?

A. 亡くなった方のその年1月1日から死亡日までの所得を申告する手続きで、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に行います。歯科医院は事業所得があるため、売上・経費・診療報酬を締めて計算する必要があり、通常より手間がかかります。

Q4. 相続放棄はいつまでにすればいいですか?

A. 相続開始を知った日から3か月以内です。医院の借入金やリース残債が財産を上回る場合などに検討します。判断には財産・負債の全体把握が必要なため、早めの調査が重要です。

Q5. 親の口座が凍結され、スタッフの給料が払えません。どうすれば?

A. 金融機関が死亡を把握すると口座は凍結されます。解除には相続手続きが必要で時間がかかります。一定額の仮払い制度もありますが、医院の運転資金は別途手当てが必要になる場合があります。早めに金融機関と専門家に相談してください。

Q6. 相続税の申告期限に、医院の決算が間に合いそうにありません。

A. 相続税は10か月以内が期限です。医院の帳簿が整っていないと数字が固まらず、期限に追われます。まずは概算で計画を立て、専門家とともに優先順位をつけて進めます。日頃の記帳整備が最大の予防策です。

Q7. 相続人の間で医院の扱いがまとまりません。

A. 医院(事業)は分割しにくい財産のため、もめやすい面があります。継ぐ人・継がない人の間で、代償分割(継ぐ人が他の相続人にお金を渡す)などの方法を検討します。評価と資金計画がからむため、早期に専門家を交えることをおすすめします。

Q8. 親が元気なうちに、しておくべきことはありますか?

A. 遺言書の作成、出資持分の生前対策、納税資金の準備、後継者への計画的な承継、経理資料の整備などです。相続が起きてからでは選べる手が限られるため、院長がお元気なうちの準備が最も効果的です。


参考・出典

  • 戸籍法(死亡届)/民法(相続放棄・限定承認、遺産分割)
  • 所得税法(準確定申告)/相続税法(相続税の申告・納付)
  • 医療法・健康保険法等(診療所の廃止・開設、保険医療機関の指定、医療法人の理事変更)

※本記事は2026年7月時点の制度に基づく一般的な解説です。手続きの期限・要件は制度改正や個別事情により変わります。実際の手続きにあたっては、必ず提出先の窓口や専門家にご確認ください。

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