椿 祐輔
監査法人・会計事務所での実務を経て、2012年に椿公認会計士事務所を開設。富裕層を対象としたプライベートバンク業務にて、「個人」と「法人」の資金設計や資産管理を行ってきた経験を活かし、歯科医院の“お金が残らない”という悩みに応えるキャッシュアップ支援を行っている。
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[キャッシュアップ顧問]
食料品の消費税が1%に|2027年4月からの減税と、歯科医院への影響を会計士税理士が解説
2026年8月、政府は飲食料品にかかる消費税率を、2027年4月から2年間に限って8%から1%に引き下げる方針を閣議決定しました。消費税率の引き下げは、1989年の消費税導入以来、初めてのことです。
食料品が安くなるのは家計にとってありがたい話ですが、事業者にとっては「対応」の話でもあります。とくに消費税と少し特殊な関係にある歯科医院にとって、この減税はどう影響するのでしょうか。「うちは保険診療が中心だから関係ない」と考えてよいのでしょうか。
この記事では、まず食料品消費税1%の制度の全体像を整理し、そのうえで歯科医院・クリニックが受ける影響と、今から準備しておくべきことを、顧問先の約半数を歯科医院が占める会計士税理士の立場で解説します。
この記事でわかること
まず、今回決まった内容を整理します。ポイントは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施時期 | 2027年4月1日〜2029年3月31日の2年間(時限措置) |
| 対象 | 現在の軽減税率の対象である飲食料品(酒類・外食を除く) |
| 税率 | 8% → 1% に引き下げ |
| 実質負担 | 中低所得者へ1%分を給付し、実質ゼロを目指す |
| 財源 | 外国為替資金特別会計(外為特会)の活用案などが検討 |
| 決定 | 2026年8月に閣議決定。1989年の消費税導入後、初の引き下げ |
今回の減税で注意したいのが、税率が3つ同時に動くことです。
これまでは10%と8%の2つでしたが、そこに1%が加わり、3つの税率が並立します。事業者にとっては、経理やレジでの区分が一段と複雑になる、ということです。
完全にゼロにしなかったのは、主に事業者側の事情です。税率を0%にすると、レジや会計システムを大きく作り替える必要が生じ、現場の負担が重くなります。1%として制度の枠組みを残すことで、システム改修の負荷を抑える狙いがあるとされています。家計への負担軽減は、給付と組み合わせて実現する設計です。
閣議決定はいわば「方針の決定」で、細かな制度設計はこれからです。9月に税制改正大綱が示され、秋の臨時国会に関連法案が提出される見通しです。給付の対象範囲や事業者の実務ルールなど、詳細は今後の大綱・法案で固まっていきます。
※本記事は2026年9月時点の情報です。制度の詳細は今後の税制改正大綱・法案で確定します。最新の決定状況は必ずご確認ください。
結論からいえば、歯科医院の売上に対する食料品減税の直接的な影響は、ほとんどありません。理由は、歯科医院の売上の大半が消費税の非課税売上だからです。
社会保険診療報酬(保険診療)は、消費税が非課税です。つまり、歯科医院は患者さんから消費税を預かっていません。食料品の税率が何%になろうと、保険診療の売上に消費税は関係しないため、売上そのものへの影響は生じません。
自費診療も、多くは消費税の課税対象ですが、これは飲食料品ではないため、税率は10%のままです。したがって、「食料品の減税で、歯科医院の売上や患者さんの窓口負担が変わる」ということは基本的にありません。
この「歯科医院は非課税売上が中心」という特殊性は、消費税のさまざまな場面で効いてきます。節税や設備投資との関係については、別記事「歯科医院の節税対策7選」でも触れています。
見落とされやすいのが、院内で物を販売している歯科医院です。予防歯科に力を入れる医院を中心に、院内で歯ブラシやケア用品、キシリトール製品などを販売しているケースは増えています。
ここで重要なのは、販売しているものが「飲食料品」に当たるかどうかで、税率の扱いが変わる点です。
| 院内で売っているもの | 分類の例 | 2027年4月〜の税率 |
|---|---|---|
| キシリトールガム・タブレット(食品) | 飲食料品 | 1%(対象になりうる) |
| 栄養補助食品・特定保健用食品 | 飲食料品 | 1%(対象になりうる) |
| 歯ブラシ・歯間ブラシ・フロス | 雑貨 | 10% |
| 歯磨き粉・洗口液(医薬部外品) | 医薬部外品 | 10% |
| トローチなど(医薬品) | 医薬品 | 10% |
つまり、同じ「口腔ケア用品」でも、食品に当たるキシリトールガムやタブレットは1%、医薬部外品や雑貨である歯磨き粉・歯ブラシは10%、と分かれる可能性があります。院内物販がある医院は、扱っている商品が食品・医薬部外品・医薬品・雑貨のどれに当たるかを、あらかじめ整理しておく必要があります。
※商品ごとの正確な分類(食品か医薬部外品か等)は、パッケージの表示や商品の法的区分によります。判断に迷うものは、仕入先や専門家に確認してください。
直接の売上影響が小さくても、事務・経理面の負担は確実に増えます。10%・8%・1%の3税率が並立するためです。
歯科医院も、消耗品や設備、スタッフの飲食(会議費・福利厚生費)など、さまざまな支払いをしています。これらの中に、税率1%の飲食料品が混ざってくると、記帳の際の税率区分が一段と細かくなります。
自費診療や物販などで課税売上がある医院では、消費税の申告で仕入税額控除を計算します。3税率が並立すると、この区分と計算がより複雑になります。とくに院内物販で1%の食品を扱う医院は、売上・仕入の両面で税率管理が必要です。
物販用のレジや会計システムを使っている場合、1%税率への対応(設定変更・改修)が必要になることがあります。インボイス(適格請求書)の税率表示も、1%に対応した記載が求められます。導入しているシステムが3税率に対応するか、早めにベンダーへ確認しておきましょう。
なお、レジや会計システムの改修・導入には、省力化投資補助金などの補助金を活用できる場合があります。詳しくは別記事「歯科の省力化補助金」をご覧ください。
最後に、経営の周辺で関わってくる点です。
院内ミーティングの弁当、スタッフ用の飲み物やお菓子など、飲食料品の購入費は1%になります(外食扱いのものは10%)。金額は小さいものの、経理上は税率区分の対象になります。
食料品の減税と給付は、事業ではなく個人の家計に効きます。院長ご自身のご家庭でも、スタッフの生活面でも、食費の負担が軽くなります。人材の確保・定着が課題となる歯科医院にとって、こうした生活コストの軽減は、間接的にプラスに働く面もあります。
2027年4月まで、まだ時間があります。慌てる必要はありませんが、次の点を早めに整理しておくと、施行時にスムーズです。
多くの歯科医院にとって、今回の減税は「売上への大きな影響はないが、物販と経理の対応が必要」という位置づけになります。自院に物販があるか、課税売上がどの程度あるかによって、必要な対応は変わります。
今回の減税は、歯科医院にとって「大きな増収・減収の話」ではなく、「実務対応の話」です。とはいえ、3税率の並立は経理の負担を確実に増やします。院内物販や自費診療の割合が高い医院ほど、早めの準備が効いてきます。
椿公認会計士事務所は、顧問先の約半数を歯科医院が占める会計事務所です。消費税の実務対応から、記帳・レジ・インボイス、補助金の活用まで、歯科医院の実情に合わせてご支援しています。
「うちの医院は、何か対応が必要なのか」——初回のご相談は無料です。自院の物販や課税売上の状況をふまえて、必要な準備を整理します。お気軽にお問い合わせください。
Q1. 食料品の消費税1%は、いつから始まりますか?
A. 2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間の予定です。2026年8月に方針が閣議決定されました。詳細は今後の税制改正大綱・法案で確定します。
Q2. 何が1%で、何が対象外ですか?
A. 現在の軽減税率の対象である飲食料品が8%から1%になります。外食と酒類は10%のまま、新聞は8%のままです。結果として10%・8%・1%の3税率が並立します。
Q3. なぜ0%ではなく1%なのですか?
A. 税率を0%にするとレジや会計システムの大幅な改修が必要になり、事業者の負担が重くなるためとされています。1%として制度を残しつつ、家計への負担軽減は給付で補う設計です。
Q4. 歯科医院の売上に影響はありますか?
A. ほとんどありません。歯科医院の売上の大半は保険診療で、消費税が非課税だからです。自費診療も飲食料品ではないため10%のままで、食料品減税の影響を受けません。
Q5. 院内でキシリトールガムを売っています。税率はどうなりますか?
A. キシリトールガムやタブレットが「食品」に該当する場合、2027年4月からは1%の対象になりうると考えられます。一方、歯ブラシや歯磨き粉(医薬部外品)は10%のままです。商品ごとの分類の確認が必要です。
Q6. 歯磨き粉や歯ブラシも1%になりますか?
A. なりません。歯磨き粉の多くは医薬部外品、歯ブラシは雑貨で、いずれも飲食料品ではないため10%のままです。1%になるのは食品に該当するものに限られます。
Q7. 経理や記帳で何か変わりますか?
A. 10%・8%・1%の3税率が並立するため、仕入・経費の税率区分が細かくなります。とくに課税売上(自費・物販)がある医院は、仕入税額控除の計算やインボイスの記載で対応が必要です。
Q8. レジや会計システムの対応は必要ですか?
A. 物販用のレジや会計システムを使っている場合、1%への設定変更や改修が必要になることがあります。導入システムが3税率に対応するか、早めにベンダーへ確認しましょう。改修には補助金を活用できる場合があります。
Q9. 患者さんの窓口負担は変わりますか?
A. 変わりません。保険診療は非課税、自費診療も飲食料品ではないため、食料品減税による窓口負担の変化はありません。
Q10. いつから準備を始めればいいですか?
A. 施行は2027年4月ですが、院内物販の商品分類やシステム対応の確認は早めが安心です。まずは自院に物販や課税売上があるかを整理し、顧問税理士と対応方針をすり合わせておくとよいでしょう。
※本記事は2026年9月時点で公表されている情報に基づく一般的な解説です。制度の詳細(施行時期・対象・給付・事業者の実務ルール等)は今後の税制改正大綱・法案で確定します。実際の対応にあたっては、必ず最新情報と個別の状況をご確認ください。
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