ご相談のきっかけ
東京都内で歯科医院を営むS様(50代・個人事業)からの無料相談でした。ご相談の内容は一言でした。「税金が高い気がするのですが、これが普通なのかどうかが分かりません」。
顧問税理士に尋ねても「利益が出ているので仕方ありません」と言われるだけ。比較する相手もいないため、判断ができない状態でした。
そこで、過去3年分の確定申告書、決算書、固定資産台帳をお持ちいただき、その場で確認することにしました。
状況の整理(タイムライン)
申告書を見れば、税負担の水準が妥当かどうかは短時間で判断できます。S様の申告内容を確認したところ、3つの論点が見つかりました。
①社会保険診療報酬の所得計算の特例(いわゆる概算経費) 社会保険診療報酬が年5,000万円以下などの要件を満たす場合、実際にかかった経費ではなく、収入に応じた一定割合を経費とみなして所得を計算できる制度があります。実額の経費が少ない医院では、この特例を使ったほうが所得を低く抑えられます。S様は要件に該当する水準でしたが、この特例が検討された形跡がありませんでした。逆に、設備投資が多い年は実額計算のほうが有利になることもあり、毎年どちらが有利かを比較する必要がある項目です。
②減価償却 固定資産台帳を見ると、数年前に導入した機器のうち、一定額未満のものが通常の償却で処理されていました。取得した年に全額を経費にできる特例が使えたはずのものです。
③所得控除 小規模企業共済にもiDeCoにも加入されていませんでした。この2つを使い切るだけで、年間165万円前後の所得控除が生まれます。
当事務所の対応
それぞれについて、改善できる金額の目安をその場でお伝えしました。 概算経費の特例については、過去の数字で両方式を比較し、どちらが有利だったかを試算しています。
さかのぼれるもの、さかのぼれないものを明確に区別しました。 申告内容に誤りがあり税金を払いすぎていた場合、原則として法定申告期限から5年以内であれば更正の請求という手続きができます。一方、届出が必要な制度の多くは事前提出が原則で、過去にさかのぼって適用することはできません。「取り戻せる話」と「これからの話」を混同しないことが大切です。
今の顧問税理士に確認していただく形をご提案しました。 乗り換えを前提にはしません。指摘した3点を顧問税理士に尋ねていただき、納得できる説明があればそれで十分です。確認用の質問事項をメモにしてお渡ししました。
結果
S様は、まず顧問税理士に概算経費の特例について確認されました。結果として、これまで比較検討がされていなかったことが分かり、その後のご判断でセカンドオピニオンから顧問契約へ移行されています。
「高い気がする、という感覚に根拠があるのかどうかを知りたかった。数字で示してもらえたことで、次にどうするかを自分で決められました」とお話しいただきました。
担当者からのひとこと
税負担が妥当かどうかは、申告書を見れば分かります。感覚で悩み続けるより、一度確認してしまうほうが早く、そして精神的にも楽です。
とくに社会保険診療報酬の所得計算の特例は、歯科医院に固有の論点でありながら、毎年の比較検討が抜けているケースが少なくありません。適用の要件があるため、すべての医院で使えるわけではありませんが、確認する価値はあります。
無料相談では、過去3年分の申告書・決算書・固定資産台帳をお持ちいただければ、見直しの余地があるかどうかをその場でお伝えします。乗り換えを勧めることはありません。