ご相談のきっかけ
千葉県内で歯科医院を営むV様(50代・個人事業)からの無料相談でした。
「材料費は上がる、スタッフの給与も上げないと人が来ない。それなのに保険点数は大きくは変わりません。数字の上では何とか回っていますが、預金が少しずつ減っています」。
このままでは半年後に資金が厳しくなる。どこに相談すればよいか分からず、まず無料相談にお越しになりました。
状況の整理(タイムライン)
直近の試算表と、借入の一覧(残債・金利・返済期間・毎月の返済額)をお持ちいただき、その場で3つの数字を確認しました。
①返済前のキャッシュフロー 利益に減価償却費を足した金額です。これが、1年間に返済に充てられる原資になります。②年間の元本返済額 ①に対してこれが何割を占めるか。ここが高すぎると、設備投資も採用もできなくなります。③固定費の構造 人件費率、材料費率、家賃。どこが重いのかを見ます。
V様の場合、①に対して②が8割近くを占めていました。つまり、稼いだ資金のほとんどが返済に消えている状態です。加えて、3本ある借入のうち1本は返済期間が5年と短く、月々の負担を押し上げていました。
一方で、人件費率と材料費率は同規模の医院と比べて極端に悪くはありません。つまりV様の問題は、日々の経営ではなく借入の構造にありました。
当事務所の対応
選択肢を3つ並べ、優先順位をつけてお伝えしました。
選択肢① 既存借入の借り換え・一本化 複数の借入をまとめ、返済期間を延ばすことで月々の返済額を下げます。支払う利息の総額は増えますが、資金が回らなくなるリスクを避けられます。V様の状況では、これが最優先の検討対象でした。
選択肢② 返済条件の変更(リスケジュール) 一定期間、元本の返済を猶予してもらう方法です。効果は大きい一方、金融機関との関係や今後の新規融資に影響が出る可能性があります。借り換えが難しい場合の次善策という位置づけです。
選択肢③ 運転資金の追加調達 当座をしのぐ方法ですが、返済負担はさらに増えます。借入の構造自体を直さないまま借り増すのは、問題の先送りになります。
あわせて、金融機関に持っていく資料についてもご説明しました。 条件の見直しは、決算書を見せるだけでは進みません。直近の試算表、今後1年の資金繰り予測、そして医院の実績(新患数やリコール率の推移)を示して、「これから返せる」ことを説明する必要があります。
すぐにできることも1つお伝えしました。 納税資金の積立です。資金繰りが厳しいときほど、納税の時期に一気に崩れます。少額でも先に取り分けておくことをおすすめしました。
結果
V様は、まず選択肢①の借り換えを進める方針を決められました。無料相談の後、金融機関向けの資料作成を含めてご依頼いただいています。
「銀行に『苦しいので何とかしてほしい』と言いに行くものだと思っていました。数字を用意して交渉するものだと分かったのが収穫です」とお話しいただきました。
担当者からのひとこと
資金繰りの相談は、早いほど選択肢が多く残ります。預金が減り始めた段階なら借り換えという選択肢がありますが、支払いが滞ってからでは条件変更しか選べなくなります。
また、資金繰りが苦しい原因が「日々の経営」なのか「借入の構造」なのかで、打つべき手はまったく違います。ここを取り違えて経費削減だけを進めても、状況は変わりません。
無料相談では、直近の試算表と借入の一覧をお持ちいただければ、どこに原因があるかをその場でお伝えします。